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2013年3月19日火曜日
感情労働
今回は、前回のテーマ「 分かりやすく伝える」とは何の脈絡もなく「感情労働」についてです。
何の気なしに本を読んでいたら、この言葉を目にして、面白そうだったので調べてみました。
通常は、「労働」といえば、よく「頭脳労働」と「肉体労働」に分類されますが、「感情労働」はこれらの労働形態の一分類として最近提唱されたものです。
肉体労働が、体を使って働いた対価に賃金を得るように、感情労働は、感情を表すことを対価に賃金を得ます。
もっとも分かりやすい例は、ディズニーランドで接客する、若くて朗らかな女性達ですね。
いかにも楽しそうに振る舞いながら、親切に対応してくれると、こちらも楽しくうきうきした気分になります。
とかいって、実は行ったことはないのですが。
他にも、飛行機の客室乗務員とか、ある種の苦情処理係とか、あるいは私たちコーチも感情労働者といってもいいかもしれません。
それどころか、最近では会社員でも上司と部下の人間関係において、感情労働的な業務を行うとも言われています。
感情労働という概念は最近のものですが、昔から似たような、労働者はいたと思います。
この言葉を聞いて真っ先に思いついたのが、西行法師。
有名な短歌がありますね。
「心なき身にもあはれは知られけりしぎたつ沢の秋の夕暮」
(出家して執着心をなくした我が身にも、深いおもむきが感じられる。しぎ(鳥の名前)が飛び立つ沢の秋の夕暮れは)
西行法師を感情労働者、などと言ったら起こられるかもしれませんね。
それはともかく、現代では感情労働者の数は昔とは比べものにならないくらいに増えたと考えられます。
ある調査では、男性労働者の1/4、女性労働者の1/2が感情労働者とされています。
ちょっとびっくりするような数字ですね。
それで、この感情労働ですが、この中も二種類に分けられます。
一つは表層演技、もう一つは深層演技といいます。
表層演技は、自分の本当の感情とは無関係に、顔だけ取り繕うものです。
例えば、上司が下らないだじゃれを言った時に無理して部下が無理して笑うような状況でしょうか。
もう一つの深層演技は、本当にその感情に浸るものです。
俳優さんですね。
前に、末梢起源説というのを紹介しましたが、これを利用しているのかもしれませんね。
笑っていたら本当に可笑しくなったり、泣いていたら本当に悲しくなったりする、というやつです。
でも、そればかりやっていたら、疲れもするでしょう。
そもそも、感情がなぜ存在するかというと、生きていくために必要だからです。
怒りの感情は、攻撃にさらされて、それに対して「戦え!」という警報を送るために発生します。
悲しみの感情は、大切なものを失ったため、それに対して「取り戻せ!」という警報を送るために発生します。
実際には、攻撃もされていないし、失ったものもないのに警報ばかり発していたら、警報機も壊れてしまうでしょうね。
このように、感情労働もやりすぎると心の不調となって現れます。
これを、燃え尽き症候群、別名バーンアウトといいます。
仕事に対する情熱が消え失せてしまい、休職したり退職してしまうこともあります。
ストレスによる、うつ病の一種です。
怖いですね。
とはいえ、職業でやっている以上、怖いですね、ですませる訳にもいきません。
これを回避するためのキーワードが二つあります。
一つは上述の表層演技か深層演技か。
そしてもう一つは、その労働に対する自律性です。
自分の意思に反して無理して働いているか、自ら主体性をもって働いているかです。
表層演技で自律的に働いていない場合は、仕事の満足感は低下していきます。
表層演技で自律的に働いている場合は、仕事の満足感は変わりません。
深層演技で自律的に働いていない場合は、仕事の満足感は低下していきます。
深層演技で自律的に働いている場合は、仕事の満足感は高まっていきます。
つまり、バーンアウトを防ぐには自律性が重要といえそうです。
では、自律性を高めるにはどうすれば?ということになるのでしょうが、これはなかなか難しいですね。
自助努力だけでなく、職場の上司の接し方も大きそうです。
この辺りは、長くなったので次回に回したいと思います。
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